札幌北一条教会 
 
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今月のみことば
「ただ一つの必要」
ルカによる福音書10章38〜48節
教師 堤 隆
8月4日 礼拝説教より
「教会の声」説教(2024年8月号)

  一行が歩いて行くうち、イエスはある村にお入りになった。すると、マルタという女が、イエスを家に迎え入れた。彼女にはマリアという姉妹がいた。マリアは主の足もとに座って、その話に聞き入っていた。マルタは、いろいろのもてなしのためせわしく立ち働いていたが、そばに近寄って言った。「主よ、わたしの姉妹はわたしだけにもてなしをさせていますが、何ともお思いになりませんか。手伝ってくれるようにおっしゃってください。」主はお答えになった。「マルタ、マルタ、あなたは多くのことに思い悩み、心を乱している。しかし、必要なことはただ一つだけである。マリアは良い方を選んだ。それを取り上げてはならない。」
 
                                 (日本聖書協会 新共同訳聖書)



 「イエスはある村にお入りになった」(38節)。その村には「マルタという女」がいて、「彼女は「イエスを家に迎え入れた」といいます。頼まれたり強制されたからではなく、ただおもてなしをして差し上げたいという一心からそうしたようです。自発的な行いです。これだけで、もうマルタが心優しい人であったと分かります。「彼女にはマリアという姉妹がいた」のですが、この妹と思しきマリアと相談することもなく、マルタは自分の一存で主を迎え入れています。こういうところからしますと、姉マルタは一家の亭主として差配していたと察することができます。普段なら当然、妹マリアは姉の立場を察して働いていたはずです。ところが、このとき妹マリアは「その話に聞き入っていた」といいます。姉は忙しく立ち働いているのに、妹は全く反対に聴き入っていました。
 いかに心根の優しい姉マルタといえども、この妹マリアの振る舞いに苛ついて、つい口走ってしまいました。「わたしの姉妹はわたしだけにもてなしをさせています」と(40節)。マルタならずとも、これくらいの事を言っても不思議はありません。しかし更に、マルタはここで言っても仕方のない「愚痴」以上のことを口にします。「主よ〜何ともお思いになりませんか。手伝ってくれるようにおっしゃってください。」マルタは主に迫り、主に対して命令までしています。「いろいろのもてなしのためにせわしく立ち働いていた」ところから出た一言です。この「一行」(38節)は主と十二弟子ですから総勢十三人になります。埃や汗にまみれたサンダル履きの足を洗うための桶、水、拭くもの。食事の支度から世話。寝室や寝具の用意。次から次にしなければならないことは山ほどありました。マルタはこれらに忙殺されてしまいました。
 こんな事情を知れば、益々マルタに同情したくなります。ところが、主はマルタの申し出に直接答えられません。「わたしが気がつかなかった。マリアに一言、言ってやろう」とは言ってくださいませんでした。主は「マルタ、マルタ」と重ねて呼びかけられました(41節)。「そばに近寄って」(40節)いるマルタに対して敢えてです。マルタが心優しい本来の彼女でなくなっていたので、何とか呼び戻そうと、主は二度まで名前を呼んで呼びかけられたようです。そして「あなたは多くのことに思い悩み心を乱している」(41節)と言われました。マルタは文字通り忙しさに心を亡くしていました。挙句に自分を主人にし、主イエスを主賓としてお迎えしたことを忘れてしまっていました。
 主はマルタにただいつものマルタに戻れと言われたのではありません。「必要なことはただ一つだけである」(42節)とおっしゃいます。「いろいろのもてなし」とは対照的にです。マルタは必要は「いろいろ」あると思い込んでいましたが、主は「ただ一つ」だけだと明言なさいます。「マリアは良い方を選んだ」(42節)。マリアが「その話に聞き入っていた」(39節)のは怠けていたからではなく、一心に必要を満たしていたのでした。直前の良いサマリア人の喩えで「行ってあなたも同じようにしなさい」(36節)と言われたのは、ただ良いことをすればいいのではなく、みことばを行う、みことばを生きることであることが、マルタとマリアの一件で一層明らかになリました。
 「それを取り上げてはならない」(42節)と主は念を押されます。マルタはマリアからただ一つの必要を取り上げそうになりました。自分を亡くし、妹まで亡くしそうになりました。私たちも自分を自分の主人とするとき、人も自分も失ってしまいます。主のみことばに聴き入って、自分と自分の愛する者とを取り戻したいと思います。
 

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