札幌北一条教会 
 
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今月のみことば
「神の子が担ったもの」
ヨハネによる福音書19章1節〜16節
牧師 堤 隆
10月27日主日礼拝説教より
「教会の声」説教(2019年11月号)

  そこで、ピラトはイエスを捕らえ、鞭で打たせた。兵士たちは茨で冠を編んでイエスの頭に載せ、紫の服をまとわせ、そばにやって来ては、「ユダヤ人の王、万歳」と言って、平手で打った。ピラトはまた出て来て、言った。「見よ、あの男をあなたたちのところへ引き出そう。そうすれば、わたしが彼に何の罪も見いだせないわけが分かるだろう。」イエスは茨の冠をかぶり、紫の服を着けて出て来られた。ピラトは、「見よ、この男だ」と言った。祭司長たちや下役たちは、イエスを見ると、「十字架につけろ。十字架につけろ」と叫んだ。ピラトは言った。「あなたたちが引き取って、十字架につけるがよい。わたしはこの男に罪を見いだせない。」ユダヤ人たちは答えた。「わたしたちには律法があります。律法によれば、この男は死罪に当たります。神の子と自称したからです。」ピラトは、この言葉を聞いてますます恐れ、再び総督官邸の中に入って、「お前はどこから来たのか」とイエスに言った。しかし、イエスは答えようとされなかった。そこで、ピラトは言った。「わたしに答えないのか。お前を釈放する権限も、十字架につける権限も、このわたしにあることを知らないのか。」イエスは答えられた。「神から与えられていなければ、わたしに対して何の権限もないはずだ。だから、わたしをあなたに引き渡した者の罪はもっと重い。」そこで、ピラトはイエスを釈放しようと努めた。しかし、ユダヤ人たちは叫んだ。「もし、この男を釈放するなら、あなたは皇帝の友ではない。王と自称する者は皆、皇帝に背いています。」ピラトは、これらの言葉を聞くと、イエスを外に連れ出し、ヘブライ語でガバタ、すなわち「敷石」という場所で、裁判の席に着かせた。それは過越祭の準備の日の、正午ごろであった。ピラトがユダヤ人たちに、「見よ、あなたたちの王だ」と言うと、彼らは叫んだ。「殺せ。殺せ。十字架につけろ。」ピラトが、「あなたたちの王をわたしが十字架につけるのか」と言うと、祭司長たちは、「わたしたちには、皇帝のほかに王はありません」と答えた。そこで、ピラトは、十字架につけるために、イエスを彼らに引き渡した。
 
                                 (日本聖書協会 新共同訳聖書)



 ピラトは自分の権力を振りかざしてはみたものの、あなたの権限は神からのものだと言われると、振り上げた手を降ろします。「そこで、ピラトはイエスを釈放しようと務めた」(12節)。一人も失いたくないという御心がピラトをここまで惹きつけました。神の真理に無知であったピラトが主と出会い、真理に引き寄せられて行きました。神様は誰のことも招いてくださっていると分かります。しかし、鉄が磁石に吸い寄せられるような自動的なものではありません。ピラトは主と言葉を交わしながら引き寄せられて行きました。これが神様の招きです。みことばによって招かれる。例外はありません。わたしたちもその一人びとりです。
 ところが、神様がここまでピラトを引き寄せてくださっているところに割って入る者がありました。「しかし、ユダヤ人たちは叫んだ。『もし、この男を釈放するなら、あなたは皇帝の友ではない~』」(12節)。この「叫んだ」は「吠えた」(直訳)です。ピラトと主とのことばによる交わりの間に獣の叫びが割って入りました。そして、ピラトの一番痛い所を突きました。吠えて噛み付いた。「あなたがこの男を釈放するなら、この男同様皇帝に背く者だ」と。絶大なローマ帝国の権力を誇る総督ピラトでしたが、この獣の叫びを聞きますとサッと身をかわします。「ピラトは、これらの言葉を聞くと、イエスを外に連れ出し、ヘブライ語でガバダ、すなわち『敷石』という場所で、裁判の席に着かせた」(13節)。あれほど釈放に努力していたのに、さっさと中止して裁判を始めました。主を自分の「外に」出してしまいます。我が身可愛さのために、自らの脆さを晒しました。ピラトは一瞬にして神様の真理から外に出てしまいました。わたしたちはどうか?自らの弱さ脆さを思わしめられることしばしばです。しかし、いや、だからこそ、神の子主イエスはこんな肩すかしを喰らわされても、御心を担うことを止められませんでした。「それは過越祭の準備の日の、正午ごろであった」。神の救いの日が過越祭です。真の過越の小羊となることを、主は担われました。主は十字架に屠られてまでわたしたちの弱さ脆さ罪を担ってくださいました。
 獣と化した人々は「殺せ、殺せ、十字架につけろ」と吠え続けます。ピラトが「あなたたちの王を私が十字架につけるのか」と言っても聞きません。「皇帝の他に王はありません」と嘘ぶきます。神の子はそれでも御心を振り払う者たちを担われました。わたしたちが担われています。畏れ多いことですが、担い続けて頂くしかありません。

 

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